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column11 コーヒーと文庫

Column 11  コーヒーと文庫

2017年、年が明け、はや一か月が過ぎようとしています。1月は成人式や大学センター試験、駅伝と、イベントが盛りだくさんでしたね。冬の寒さもピークに達し、大阪心斎橋でも雪がちらつく日があります。
また、京都ではちょうど週末に積雪があり、今年初めての大雪にはしゃいでしまいました担当Nです。


さて、2017年最初のコラムは「コーヒーと文庫」です。漫画担当のUがご紹介する暖かい飲み物のお供にぴったりな文庫本についてのお話しです。
 
 
絵のない絵本
日本最初の文庫、岩波書店の「新訓万葉集」
今でも買える貴重な1冊。

文庫本はコーヒー1杯分の値段で買えるというのが昔の売り文句で、
1杯280円のコーヒーが主力なら文庫本もその価格帯といった具合でした。

でも、その図式はデフレによる価格破壊、本の厚みの変化といったもので互いの様式にもう2度と交わることのない状態になってしまいました。現在、心斎橋アセンスの店頭に並んでいる文庫本の平均価格は745円で、一杯100円のコーヒーが味わえる時代にその隔絶感は明らかです。

しかし、高い高いと嘆いていても仕方ありませんね。それよりか文庫の良い部分をもっと賛美してみたいと思いキーボードを叩いてみることにしました。
文庫とは良作を安価で、持ち運びしやすい大きさにした本を指します。
原材料の高騰による少々の価格上昇は避けられないものの、その属性ゆえに、今もなお、手頃な値段で販売されている良作が多くあります。そんな安価で今も色あせない文庫本を紹介していこうと思います。


絵のない絵本
絵のない絵本
村田沙耶香ハンス・クリスチャン・アンデルセン(新潮文庫 309円)
 
1. 言わずと知れたアンデルセン童話でおなじみの、元オペラ歌手志望のアンデルセンです。人魚姫やマッチ売り少女なども有名ですが、1冊に33ものショートストーリーが収録されている本書も本当に隠れた名作です。ページ数も100ページ強と読みやすさ重視です。
こんなコストパフォーマンスの高い文庫はそうはないですぜ、お客さん。




 
さいえんす?
さいえんす?
東野圭吾(角川文庫 432円)

2. 本当に多ジャンルでかつ緻密に組まれた稀代の小説家も、こんな面白そうな本で「安価」な本を書いていたんですね。
内容は彼のネタ帳ではないのだろうか?ともとれるエッセイで、彼の素朴な疑問から科学的な小ネタなど、「こんなこと考えてんや〜」「ああ、これあの話に通じる〜」とか東野圭吾をよりおいしく頂ける1冊です。刊行は2005年と今回の主題「コーヒーと文庫」にうまくリンクした良書です。



 
へたうまな愛
へたうまな愛
蛭子能収(新潮社 432円)
 
3. 蛭子さんの自伝的な小説。生い立ちから妻の死、大好きな競艇の話など、独自のエビスワールドの世界感とはまた少し違った等身大がよく描かれたエッセイです。蛭子さんでしょうなんてことは、嫌でも本文中から分からされるので、そこも大きく踏まえ解り合える1冊です。
それと「ああ、世の中にはこんな人がいるんだな」と変な納得をして、人に勧めたり、贈答したりするときにも重宝されます。なんせ、価格が安いですからね。



 
七つの濡れた囁き
七つの濡れた囁き
「特選小説」編集部(新潮社 432円)現在絶版状態
 
4. 最後は官能小説です。432円で、草凪優、新堂冬樹、神崎京介、岩下志麻子、渡辺やよい、内藤みか、森下くるみといったエース級が、この文庫オリジナルで7本もの官能小説を書いていること自体貴重なのに、それが432円で手に入るなんて・・・・。
内容そっちのけでこの文庫の奇跡を楽しみたいですね。惜しむらくは絶版であるということで、紹介だけで堪能できないということではないでしょうか?
是非ともこういう活動は続けていただきたいと思います。なんといっても文庫所有の面白さが増します。



以上4冊の文庫を紹介しましたが、いずれも昨今の物価上昇に抗うかのごとく「低価格」を維持し続けていて、尚且つオモシロイを文庫といった半永久的な知のアーカイブに詰め込めてくれているわけです。
一方、文庫の価格が上昇している原因が、本という文化を守っているためになくてはならないという側面もあります。わかっているんですよ、わかっては・・。本はどんな作品を読んでも知の蓄積になります。ならば、価格だけで選んだ売り場があってもいいと思います。そんな棚作ってみようかな〜。


 

コスパの良い文庫をもってお気に入りの喫茶店で、ゆったり、、、
自宅の最寄り駅にある名曲喫茶ではレコードで音楽がかかっており、私語厳禁だそうです。読書にはもってこいの環境です。
今週末も寒くなるようなので、そこでのんびり過ごしたいなぁと目録んでいます。

2017年もオンラインコラム、オンラインショップと、より良いものにしていきたいと思っております。
本年も、どうぞよろしくお願い致します。




【 過去のコラム 】

Column #10  さよなら、2016年 ふりかえりの本棚   (2016.12.29)
Column #9 絵本は最高の贈り物   (2016.12.17)
Column #8  あの人へのギフトブック (2016.11.24)

Column #7  京阪神から気軽に行ける絶景旅 (2016.11.12)